「ねぇ・・・本当にいいの?」
何を今更と言われてしまえば、本当にそうだけれど。
聞くなら今で、それを言えるのは私しかいないって思ったから。
着飾った幼馴染を前にして。
あんたはだって、今まで頑張りすぎていたから。
毎日毎日走ってばっかりで。
小さな体に傷つけて。
泣けるのに、泣かなくて。
いつも大丈夫だよって笑ってて。
あぁ、あんたがいつか本当に笑って幸せになれればいいって。
いいってそう思っていたから。
少しぐらい遊んだっていいし。
出来るなら自由にただ自分のためだけに生きてみればいい。
怠惰に一日を過ごしてみたり。
ただ流れる雲をのんびりと眺めてみたり。
必要に駆られた知識ではなく、ただ自分のための知識を求めてみたり。
馴染みの人に愛され守られて、
暗闇にも寒さにも怯える事無く眠ったり。
朝日がきれいだと笑いあったり。
一番星を見つけて、流れ星を探して。
朝焼けの紫の中で、まどろむように朝食の卵を取りに行こう。
そんなさ。
そんなゆっくりと流れる「日常」ってやつを。
あんたは過ごしていいと思う。
過ごすべきだとそう思う。
結婚するって聞いて。
嬉しかった。
あんたはすごい恥ずかしがり屋で、必要のない遠回りをするんじゃないかって思ったから。
だから。
あんたが素直に(まぁ照れてはいたけれど)。
沿って歩く人を見つけられたのなら、
それがとても嬉しかった。
着飾った幼馴染。
あぁもう。
キレイだわ。悔しいぐらいにね。
今まで男の恰好していたなんて、本当にあぁ勿体無い。
これで誤魔化されていたなんて、軍の人たちって鈍感なのか。
目が節穴なのか。
聞けば旦那さんは軍部のあの人ならしいから。
そんな人ばっかりじゃなかったのか、ただその人が女好きだからなのか。
白いドレスはやっぱりエドによく似合う。
黒とか赤とかばっかり着てたエドは、
それが決して似合わないわけではないけれど。
それでも白がやっぱり似合うと思う。
肌も白くて流れる金色の髪は艶やかで光りを反射している。
瞳の金も意思の強さとか、気高さを示して、美しい。
「本当にいいの?あんたしたい事があったら、言えばいいし、
結婚だって今しないといけないってものじゃないでしょ?」
「・・・・いいんだよ、ウインリイ。
ありがと。でもあいつがいいし、俺が傍にいたいんだ」
ごめん。降参。
今日が最後のチャンスとばかりに言ってみたけれど。
あんたのそんな顔みたら、もう何も言えない。言わない。
あぁ、あんたがいつか本当に笑って幸せになれればいいって。
いいってそう思っていたから。
今がそうなんだって。
その顔を見たらこっちが恥ずかしくなるくらいに。
幸せなんだろうなって。
はいはい。
あんたはいつも先に歩くんだから。
大切な大切な幼馴染に祝福を。
この世界が甘くなるくらいの幸福を。
貴女の笑顔が曇らないように。
さあ、教会のベルの音が響くよ。