エドワード・エルリックの場合

 

 

 

 

 

目を開いたその空間に、

夢に見ていたその人がいた。

 

 

 

 

 

 

見たことのないような、

酷く可笑しな顔をしていたりして。

 

 

 

 

 

久しぶりに笑った・・・というか、身体が動いたというか、

まぁ、そんなところで、体中が痛い。

 

まだ頭はぼんやりとしているし、

頭が痛いと思うけれど、

今まで夢で見ていた大佐・・・准将が、

馬鹿みたいにこちらを心配そうに見ていて、

なのにその真剣な顔に反して、顔は酷く腫れている。

 

 

あのカッコ付けの男が、

自慢の顔を腫らしているなんて。

 

 

 

 

 

ヘマをして、怪我をしてしまって。

どれくらい眠っていたか分からないけれど、

自分は結構危なかったらしくて、回診に来た医師にそう言われた。

そして、「軍の方もとても心配していましたよ」と言われて、

すぐに浮かんだ准将の顔を、慌てて打ち消した後だったから。

 

 

恥ずかしかったり、どうしようもなかったりして、

取り敢えず、顔を見れた安心感とかあったのに、

・・・・・笑ってしまった。

 

 

 

夢だけれど、自分は確かに准将に嘘を打ち明けてしまっていて、

その・・・『好き』とか言ってしまったわけで。

今までずっとずっと、内緒にし続けていた、蓋を閉じ続けていたことを、

打ち明けてしまったようなそんな恥ずかしさがあるわけで。

 

 

 

例え夢の中の自分の行動だったとはいえ、

そんなにすぐに切り替えられるような気持ちではなくて。

 

真面目になんて、目を合わせられない。

笑って・・・とにかく、【いつもの俺】であり続けなきゃと思う。

 

 

 

 

目の前のこの人は、夢の中の彼とは違う。

自分のものになんてなってくれない人。

違う誰かと道を進んでいる人なのだから。

 

 

 

 

笑っていても、意を唱えるわけでもなく、

ずっとこちらを見ているから。

しかも、その目がなんだか・・・優しく見えたりするものだから。

 

 

「なっ・・・なんだよ。

 悪かったよ・・・おっ怒ってるのか?」

 

 

 

そんな目で見ないでよ。

都合よく思ってしまうから。

 

 

 

【いつもの俺】でいるために、

あんたも【いつもの准将】でいてくれよ。

 

 

 

准将は立っていた場所から、

こちらに歩いてきた。

いつもはコツコツとなる軍のブーツの音が今はしなくて、

絨毯でも敷いているのかな?なんてどうでもいいことを思う。

 

身体を起こす事が出来ないので、ベッドの横にどんな椅子があるかなんて分からないけれど。

ベッドの傍に腰を下ろして、

少しだけ呼吸を整えるように小さく息を吸ったのを感じた。

 

 

 

 

 

 

「君に伝えなくてはならない事があるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

ロイエド子