くうくうと寝息が聞こえる。

外は深々と雪が降り積もり、辺りを白く染めていく。

 

そういえばこんな夜は、いつも誰かが傍に居てくれたように思う。

 

幼い頃は母さんが、寒いからと一つの布団に入って

抱きしめあって眠ったのだ。

あぁ、こうして冬になっていくのだと。

幼心に毎年続くと思っていた年中行事だった。

 

それが変わって、

暖かかった母さんは居なくなってしまったけれど

暖かさは感じられなかったけれど

それでも弟が傍に居た。

 

体が冷えるから別々に眠ろうと言われたけれど、

それでも初雪の降る夜は1人で眠ることが出来ずに

半ば無理やり弟と眠った。

 

冷たい体は辛かった。

 

その度に過ぎた一年を悔しく思って、

もう二度と初雪のこの日に冷たい体を合わせることのないように、

必ず取り戻してやると心に決めた。

 

 

長かったような、

それでもその意味を考えれば短かったのかもしれない日々を越えて

 

弟は体を取り戻し、自分も腕と足を取り戻した。

 

そして、

 

ずっと見守ってくれて、

時には背中を押してくれて、

そうして自分を守ってくれていた人と一緒になった。

 

 

自分はあんな罪を犯したのに、

どうしてこんなにも幸せを手に入れることができたのだろう。

 

耐えて耐えて涙を堪えていた日々のその先が

こんなにも暖かいものなのは、どうしてだろう。

 

 

左側には自分を抱いて眠ったそのままで

腕を投げ出して眠る人がいる。

 

夜の闇のように黒いその瞳を今は優しく閉じて、

小さな寝息を立てている。

 

右側にはベビーベッドが置いてあって、

二人の可愛いお姫様が眠っている。

 

いつもは激しく泣く夜もあるというのに、

今日は父親と同じ黒い瞳を閉じて眠っている。

 

聞こえるのは、三人の寝息。

とても愛しくて堪らないそんな三人の。

 

 

 

あぁ、なぜこんなにも暖かくなれるのか。

 

外は冷たい白い雪。

 

なのに、こんなにも暖かい。

 

 

 

ポタリ

 

自分の瞳から何故か涙が溢れてくる。

 

うん。

 

泣いては駄目だとそう思ってきたけれど、

今は、幸せだから泣いてもいい。

 

横の黒い髪を梳くように撫でる。

サラリと男性の髪にしては柔らかいのだろうその髪を撫でる。

 

 

「愛しています」

 

そう、幸せの涙は貴方に届けたくて届けたくて

そうして溢れてくる想いの切っ先。

 

どんなに告げようと、きっと伝えきれる日など来る筈がない。

 

想いは毎日溢れてくるのだから。

 

 

抱き込むようにしてその頭を抱える。

 

「っうん?」と寝ぼけた声がするので、起こしてしまったようだ。

それでも、抱きしめずにはいられなかった。

 

ごめんね。

でも、許して。

 

「・・・エディ?」

 

「ロイ・・・愛してる・・・」

 

疑問の声だけど、でもそんな事感じなくていいよ。

 

愛しているの。

だから、泣いてしまうの。

 

幸せなの。

だから、泣いてしまうの。

 

聡い貴方のこと、言わなくても分かっているのでしょう?

 

それは恥ずかしく思うけれど、自惚れてもいいよ。

それ程私は貴方が愛しくて堪らない。

 

スルリと腰に腕を回して、自分を抱き寄せてくれる。

 

寒い夜は、こうして抱き合って眠ろうね。

暖かさが溢れてくるように。

 

 

「愛しています」

 

「私も、愛しているよ」

初雪の降る頃
ロイエド子