「あんま無理すんな・・・よ」
横でくうくうと眠る少女の頭を撫でる。
サラリと手を通る髪は金色で、三つ編みから解かれて肩に流れている。
男のそれとは違い、甘い香りすら漂うようだ。
この細い肩にどれほどのモノを背負っているのか。
寝食を忘れるようにして進んでいるのを知っていながら、
何も出来ないでいる自分。
自分の前では「力を抜いてくれ」と思うのだけれど、
そう言ってみたところで、
「大丈夫」と笑いながら進んでしまうことを知っている。
なぁ、どんな言葉なら貴女に届くのだろう。
走り回るその姿を見ているから。
かける言葉を見出せない自分は、その姿を目で追う。
貴女が進んでいる先を同じ目線で見ることなど自分にはできない。
それでも、貴女がやり遂げた「それ」を見たいと思う。
待っているから。
進む貴女のその足をどんなモノでも止められない。
倒れてしまわないかと心配しようとも、その言葉に休んでしまえない貴女を知る。
だから、待っている。
帰ってきたら、ここに。
抱きしめよう。
貴女は涙を見せず、ただ一心に。
その行く先だけを睨んでいたから。
留まって欲しいと、何度その腕を取ろうとしたことか。
しかし、
そうする事が貴女の為ではないのだと知ったから。
だから、
全てが終わり、その肩の荷の代わりに、
この腕の温かさを。
横にいるその髪を撫でる。
少しでも心休まる空間であればいいと願いながら。
「頑張れ」とは言えない。
何より頑張っているということを自分は知っている。
曖昧に笑ってやることしか出来ないけれど、
貴女のしていた事の何分の一しか知ることが出来ないのかも知れないけれど、
目指すモノのその達成の為に、
貴女がしてきた事の一つでも欠ければ、
それが成されなかった事が事実。
それだけは、自信をもって言えること。
大好きだよ。
大好きだよと、貴女に伝えよう。
決して言葉で返せない程の思いを貴女から貰って、
毎日会える訳ではない貴女を思う。
金色の髪は太陽の色。
全てをつつむあの光の色。
そして、月の色。
夜の闇に浮かぶ全てを暴くあの光の色。
孤独には成らないで。
朝の光りに戸惑う事があるかも知れない。
けれど俺がいるから。
どこか遠い街の夜明けだとしても、
深い眠りの縁にあっても、
何度でも名を呼んでやる。
迫り繰る夜の速さに泣きたくなる事があるかも知れない。
けれど俺がいるから。
すぐ傍でも手を伸ばせないもどかしさがあったとしても、
心が貴女の傍を離れることなどありはしない。