う〜ん。どうしようか。
好きだとささやいてみようか。
それとも突然抱きついてみようか。
いきなりキスをするのもいい。
なんだか悪戯したい気分。
いつだってドキドキしているのはこちらな気がして、
何となしにこんな気分になったりする。
もぞもぞとしたくすぐったさに
じっとしていられない。
結婚していくらか同じ時間を共有して、
前よりもっと好きになった。
傍にいるのは暖かいし、空気は優しい。
黒い髪は撫でればつややかで、瞳は吸い込まれるよう。
仕事に出て、帰宅までまだ時間がある。
家でする仕事は思っていたよりもたくさんあって、
暇だと思う事はあまりなかった。
やり出すと時間を忘れて熱中してしまう性格もあるのだろう、
洗濯も掃除も料理だって楽しかった。
その全てが大好きな人に繋がって行くのだと思えば、
なおさら嬉しくなった。
パタパタと、もし自分にしっぽがあったならば、
盛大に振っているのではないだろうか。
「待て」と言われて、大好きなモノを目前にして耐えているかのようだ。
まだ開けられない玄関のドアを目の端で捕らえる。
「・・・早く帰ってこいよ」
自分が旅をしていた時。
離れる時間は今よりも何倍も長かった。
平気で2、3カ月会わない時だってあったのだ。
今ではどうして平気だったのか分からない。
まぁ、平気だと言いきってしまえる程に平気ではなかったのかも知れないが。
声が聞きたくて、その姿を目に映したくて、
名前を呼んで欲しくて。
それが全て叶えてしまえるぐらいに近く、
一緒に過ごせる今がある。
さぁ、その扉を開けて。
「ただいま」とその声を聞かせて。
黒い瞳に映る金色を見るのが好きなの。
貴方が私を捉えてくれている証。
好きだとささやいてみようか。
それとも突然抱きついてみようか。
いきなりキスをするのもいい。
貴方が望む迎え方をしよう。
どれがお好み?
貴方は少し照れて笑って。
そして、クシャリと髪を撫でてくれるのでしょう。
その手の暖かさも安心するの。
抱き込むようにして瞼にキスを落とす。
私は金色のまつ毛を震わせて、それに答えるわ。
「ただいま」
「お帰りなさい」
いつも一番に聞かせて。
いつも一番に言わせて。