「バッタバッタと破天荒〜♪はっちゃめっちゃ人生ぃ〜♪」
トントンとリズミカルにまな板を叩く音とともに、
聞こえてくる軽快な歌声。
それにあわせる様に「どんどこ」とか「やぁれ!!」とか
合いの手が加わっているのは、可愛らしい娘の声で。
ロイ・マスタング。
地位は軍の少将であって、かなり高位な訳だが、
そんな彼の愛して止まない妻子は入り込めない独自の世界を作り上げつつあった。
新聞に目を通していたのだが、
どうも耳に入ってくるそのリズムが気になってならない。
きゃらきゃらと笑っている声は可愛らしいし、妻の声は美しい。
けれど。
その歌詞はどうなのだろうか。
「・・・・エディ・・・・その歌は何なんだい?」
とうとうと言うべきか。
ロイはキッチンで夕飯を作っている妻に尋ねた。
足下にはお揃いのレースがついているエプロンをつけた娘がいるが、
どうやら、歌の途中で話しかけられた事にご立腹らしく、
「パパは入っちゃや〜」とか「まだですよ」とか言いながら、キッチンから追い出しにかかった。
そんな姿も可愛く映る父親としては、
このままその場を後にしてもいいぐらいには思ったのだが、
それでも仲間はずれ感は否めない。
普段から仕事が忙しく、話題には敏感でなくては家族の絆が薄れてしまうのではないかと
思っていただけに、ここは譲れないと決意も新たに止まることにした。
「で、その歌は何だい?」
よしよしと娘の金色の髪を撫でてやりながら、
包丁を持ったままの妻に話しかける。
「これ?これは、【解決☆爆発少女!クミンの冒険】の主題歌だよ」
「「なぁ〜」」と妻子は肯きあいながら教えてくれた。
主題歌・・・あぁ、アニメでもやっているのだろうか。
普段からアニメが放送されている時間に家にいることは珍しいために、
子供向け番組の知識はあまり持ってはいなかった。
首を傾げる様子の父親を見て、
大好きなアニメの面白さを娘たちは目を輝かせながら語り始めた。
キッチン追い出し計画はとりあえず終了したようで、
今は、大好きなものを父親に話したくてしょうがないらしい。
「クミンはすごいのぉ」
「爆発をバンってやって・・・終わりなの〜」
「「ねぇ〜」」と再び肯く。
まだまだ拙い表現ではあるが、一生懸命に面白さを伝えようとしてくれる娘の姿に、
ロイは感動すら覚えていた。
が、しかし。
・・・・爆発でバン。
娘は、その動作をまさに指パッチンでやって見せてくれた。
ストーリーは毎週違っているようなのだが、
解決はどうもその指パッチンらしい。・・・指パッチンで爆発・・・。
頬に手を当てて、思案ポーズを取った、夫の横で、
娘の解説中に妻はあらぬ方向を見つめ、鍋をかき回し続けていた。
「でもね!今週は危なかったの!!」
「怪物が水のオバケでね!!火が消えちゃったの!!!」
あぁ・・・なんだこの親近感。
爆発少女クミンなるヒロインに只ならぬものを感じざるを得ない。
「エディ・・・今度そのアニメ一緒に見たいのだが」
「あっと・・・・・司令部で聞いた方が早いかもよ・・・・」
【解決☆爆発少女!クミンの冒険】
毎週火曜日 夕方6時から絶賛放映中
監督・エリザベス 作画・ジャクリーン 音響・ケイト
協賛・キング・ブラッドレイ にてお届け中・・・・。
なお、火曜日は何故か毎週、ロイ・マスタング氏は残業のこと。