童謡にある「こぎつね」が好きです。
「こぎつねこんこん山の中〜」という歌詞の。
絶対可愛いですし、仔狐がエドちゃんだったらというお話。
エドさん=子狐
ロイさん=エド狐と住んでいる狐
その他森の仲間たちもろもろも出演予定・・・・。
【或る日の出来事】
「うぉ!この木の実珍しい色だなぁ〜どんな成分なんだろ〜」
「・・・君、化粧に使うんだろ?」
「え?・・・あっあぁ、そうだぞ。うん、だから探しに来たんだから」
「なら、成分がどうのという話も、その『木の実図鑑』もいらないだろう?」
「これはだな〜・・・・・そっそうだよ!かぶれたらいけないから図鑑で調べてだな」
「あぁはいはい。お化粧したら一緒に紅葉狩りに行くんだろう?」
「おっおう!紅葉のかんざしを見つけるんだ!!」
【仔狐行方不明】
「どっどうしよう・・・帰り道が分からない」
見かけない蝶を追って気づけばどこかの原っぱに来ていた。
明るく照らしていた太陽もすでに赤く色を変えて山の端に沈もうとしている。
反対側の空は随分と暗くなってしまった。
「君はすぐに夢中になってしまうのだから、気をつけないといけないよ」と、
いつもロイに言われているのに、とエドワードはしっぽをぎゅっと抱き寄せた。
自慢のふかふかとした金色のしっぽはエドワードの不安を表すようにして、
ぽふりと広がってしまっている。
父も母もはぐれてしまった弟も今は安否が知れない。
それはこの金色の毛色を狙って人間たちが狩をしているからなのだとエドワードは知っている。
まだ小さかった時に聞いたことだったけれど、覚えている。
物心ついた時にはロイに言いつけられた。
決して1人で遠くまでいかないようにと。
この金色の毛色はとても珍しくて、
自慢のふかふかのしっぽを人間は欲しがるのだと。
あんなに言われていたのにと、エドワードの瞳が揺らぐ。
このまま人間に見つかってしまうのだろうか。
そうしたらもう二度とロイに会えないのだろうか。
家族がいなくなっても寂しくなかったのはロイが居たからなのに。
もう・・・会えないのだろうか。
どんどんと暗くなっていく空、風がぴゅうと吹き抜けていく。
どうしようどうしようとカタカタ震えるままに座り込んでしまう。
「エドワードくん!!!」
どうしようもなくなった時に、
風が一層早く自分の頭を過ぎていくのをエドワードは感じた。
次の瞬間にはピィィィと甲高い声が響く。
「リザさんの声だ!!!!」
エドワードはピンと耳を立てると、濡れていた目で空を見上げた。
薄暗い空を一羽の鷹が飛んでいる。何度も空に円を書くように跳ぶと、
エドワードの傍にそっと降りた。
「良かったわ心配したのよ。暗くなると私の目も使えなくなるし…。
早く見つけられて本当に良かった。心細かったでしょう」
優しく言われて、止まりかけていた涙がまたポロポロと溢れてくる。
「さぁ、みんなに知らせたからすぐに迎えがくるわ。帰りましょうね」
言うが早いか、すぐにロイが駆けつけて、その後にハボックが掛けてきた。
足の速い二匹の狐に遅れをとったのは狸のブレダだ。
心配かけたことを叱るロイを「まぁまぁ」と諌めるために必死で走ってくれたようだ。
「見つけれてよかったスね〜」とのん気な台詞を漏らしたハボックは、
ロイのしっぽによって叩かれるという理不尽な目にあいはしたが、
それでも森の夜は「めでたしめでたし」に包まれ、ふけていった。
【人間の不思議】
「なぁロイ…あれなんだ?」
寒さは幾分和らいだとはいえ、まだ春は一月ほど先だろう。
日差しだけはありながら、それでもぴゅうと吹き抜ける風は冷たい。
そんな毎日を小高い山の上で過ごしていたが、
散歩と称して魚でも獲ろうかと川まで出てくれば、
先客におかっぱ頭の童がいた。
赤いヒラヒラとした帯と余所行きのモノであろうかんざしが可愛らしい。
手には小さな雛を抱いている。
「あぁひな祭りか」
ひな祭り?と首を傾げるエドにロイは人間たちが行っている行事を教えた。
「女の子が健やかに成長するように、
溜まった災いを雛に託して川に流すんだよ」
「あんなに可愛いのに?流しちゃうの?」
それは童もそう思っているらしく、
母親に早く流してしまいなさいと促されているのに、
どうしても雛を流せないでいる。
「あの人形は身代わりだからね」
生きている大切な人が幸せになれるようにと。
だから流してしまうんだよ。
「ふぅ〜ん・・・・俺は人間じゃなくてよかった」
「どうしてだい?」
「だって人形が可哀想だろ?
それに、自分に溜まった災いぐらい自分でどうにかするよっ!」
君は知らないところで大きくなっているんだね。
自分も同じ事をしたいと言うかと思っていて、
なら人形を草花で作ろうかと先走ってこちらは考えていたというのに、
流される人形が可哀想だと君はいう。
「私がいるよ・・・君に降りかかる災いなんてすべて蹴散らしてやる」
「魚が跳ねた」とフサフサの金色の尻尾を揺らして駆けていくエドの後姿に、
ロイは1人で話しかけると、すぐにその後を追い走り出した。