「さっさと吐いちまった方が楽だぞ〜」
捕らえられたテロの一味は丈夫な縄でぐるぐる巻きにされ、砂や泥が散らばる荒れた場所に座らされていた。ハボックはトントンと肩を叩き、上司の質問の答えを促した。
ロイ・マスタングは問うた。
「何故、通信機器を破壊したに至ったのか。その真意はどこにあるのか。」
それは襲撃前に抱いた疑問であった。
すでに犯行声明を軍部に届けた後の犯行だ。軍内の通信機関の混乱を狙ったにしろその犯行の意図は、
地下に設置された外部通信機器を破壊するという手間に見合うとは思えなかった。
また、捕まえてみて分かったことではあるが、この小物どもが何故場所の特定をし得たのか疑問だ。
統率力、武器の所有に至るまで不十分な団体である。
・・・どこかに指導者がいると考えていいのか。
・・・もしくは他の不穏分子がいるとでも。
頭に布を巻き、無骨な恰好をした1人の男性(後に頭と呼ばれていたので、統率者であることが判明)は、
「へっ」と軍人たちを睨み付けた。
「どうして俺たちがあんたらに情報をくれてやる必要があるんだ」
いかにも億劫だというようにして、縄で捕らえられた男は答えた。
その男にツカツカと軍靴を鳴らしロイは目前に近づいた。
近寄ってきた軍の司令官に男は厭らしい視線のまま目線を上げたが、次の瞬間には壁際に投げ出されていた。
ロイは男の頬を殴った。
「お前たちが情報を与えるという傲慢な考えは捨てたまえ。
私たちは情報を乞うているのではない。話す事意外にお前たちの存在理由がないことを知れ」
後ろに捉えられていたテロ犯たちは何人か男の下敷きになって呻いていた。
男のすぐ傍に座らされていた者は、ロイの殺気にも似た感情を直に受けてしまい、
ガクガクと身体を振るわせた。
「あぁ・・・だからさっさと吐けって言ったのに」
火を点けてはいない煙草を咥えたハボックは、ガシガシと頭を掻いた。
ロイ・マスタングの機嫌が急降下しているのを感じているからだ。
唯でさえ、愛妻家を公言憚らない彼が何日も司令部に缶詰となり、
いざテロの犯人を追い詰めて見たものの、自分たちが考えていた者よりもはるかに小物なモノばかり。
いっそ「敵ながらあっぱれ」なテロ犯ならば、缶詰になったことも無駄ではないと思えたが、
こんな者たちの為に・・・という思いが上官にはあるのだろう。
「おっ俺たちは・・・・」