「エディ!!」
ロイは自宅のドアの鍵を開けることも時間の無駄だと、
絶妙に調節された焔でそのドアを焼き破った。
ブレダ、ハボック両少尉からロイに報告されたのは以下のようなものだった。
届いた犯行声明の中に、軍部のタイプライターを使ったものが紛れていた事。
軍部のというのは、伝令用に使う特殊文字をキーボード内に配した作りをしているものを指す。
時代の流れに応じて伝令文字は変化していくために、随時作り変えられていく。
兵の話によれば過去のタイプライターM32-5型が文面作成に使われていると考えられるらしい。
特殊文字を除けば事務用のタイプライターとしての機能は充分に使えるために、
古い型であっても軍内に残っていることは珍しくない。
しかし、この型は特殊文字の他に「J」の文字が他のタイプとは異なっているらしく、
目ざとい兵は珍しいその文字から「M32-5」型軍部用のタイプライターだと特定したという。
珍しいそのタイプを使っていた部署、指摘された諜報部によれば、
確かにそのタイプライターは部署内に設置されており、使われているとのことだ。
しかし、個人にあてがわれた者ではないので、たとえここで犯行声明を打ったとしても、
誰が文章を作成したかまでは特定できないという。
「部署内の者を拘束、取調べを行う!!
軍名簿とともに、各自階級を述べよ!!」
手渡された軍名簿に目を通しながら、よく通る声でホークアイは告げた。
その間も詳しい犯行声明の解析は続けられている。
「はっ!!しかし、現在任務の為に出払っている者が数名おります」
「階級、名、任務については」
敬礼のままに諜報部の幹部が声を続ける。
「・・・・。
・・・・。
・・・・。
ルードア・ヘッセ伍長、テロにおける要人警護の任。
・・・・。
・・・・。
以上であります」
「要人警護?その要請はどこから」
ビシリと敬礼のまま返答を待っていた幹部は、はっ?と今までにない声を続けた。
「いえ・・・マスタング准将からの任だと聞いておりますが。
奥方さまの身辺警護であります」
確かにハボック少尉によってエドの身辺を警護するようにしたらどうかという案は出ていた。
がしかし、実際にその任はマスタング准将の口から命じられてはいない。
にも関わらず、一兵がその任を遂行するために出払っており、
その部署は問題の犯行声明が作成されたのではないかと思われるタイプライターを所持していた。
「軍に在職している者が犯人なら・・・軍の通信機器を破壊するなど容易いことね」
ホークアイはパシリと手にしていた名簿を指で弾くと、
報告とその後の役割を指示しながら、頭の中では妹のように思っているエドの安否を案じた。
「はっ『我々は次なる報復を用意している。
要求が果たされない場合金色の太陽の安全は保証されない』だと!!好きな事を言ってくれる!!」
「だから〜エドの警備をしろっていったんスよ・・・俺は・・・」
「うるさいぞ!ハボック!!!とにかく急げ!!!」