「最後の足掻きというわけか」

 

犯行声明から犯人の導き出しをおこなっていた司令部内に更なるテロの被害が伝えられた。

ここは犯人の隠れ家と思われる場所近くに設置した野外テント。

 

「しかし、何故あいつらは外部電信用の通信機器を破壊したのか?

 内部通信を遮断する方が余程効果的であるだろうに」

 

被害状況の確認の為に出向いた先で報告を受けながらロイは呟いた。

手元にはテロの実行犯が行ったテロ行為についての報告書と一連の時事経過。

そこには昨日起こった通信機器障害についても記されていた。

 

もちろん妻との会話を遮られるという被害は許し難いことではあるので、報復はさせてもらう。

しかし、テロの実行犯として軍内部の通信を途切れさす方混乱を招くには効果的であるだろう。

 

「・・・単に間違えたとかそんな所じゃないんスか?」

 

ハボックは短くなった煙草を手に持ちながら言う。

しかし、ロイは顎に手を当てたまま思案を続けた。

 

「それにしては配線がキレイに切られていたとの報告だが」

 

「はい、破壊されたのは地下埋め込み式の軍外部通信機器です。

 通常の連絡系統を遮断しようと思えば、交換手を狙うかその施設の破壊の方が余程簡単かと」

 

報告書を作成したフュリーはその犯行の特質について語った。

軍では電波傍受の危険も考慮しながら、外部通信は交換手によって内線へと繋がれる。

その施設は軍の敷地内に存在しているものの地下に埋め込まれている通信機器を破壊することに比べれば、テロを起こす犯人にしてみれば直接破壊しようとした方が簡単であろうと言えた。

 

「・・・犯行の発覚を遅らせるため・・とか?」

 

「いや、犯人は犯行声明を送ってきた後に通信機器を破壊していることになる。

 それならば、発覚を遅らせるという考えは・・・」

 

「ただ単に混乱を起こすことが目的とかっスか?」

 

 

ドドドっ!!!

 

 

「あぁまた始めちゃってますね・・・」

 

自分たちの隠れ家が軍に発覚したことがあちら側にも伝わったのだろう。

統率を失ったテロ犯は無作為に銃の乱射を始めている。

 

再び起こった銃撃の音に、ハボックは新しい煙草を咥えた。

ロイを囲むようにして報告書を覗き込んでいた一面も次々に立ち上がる。

 

「・・・捕らえれば分かるのでは?」

 

ギィンと銃の装備を整えながらホークアイが口にした。

それにロイは薄く笑ってこたえ、「ではそうしよう」と手の発火布をグイと引き寄せた。

ロイエド子