「ねぇ・・・今日何かそわそわしてない?」
お昼の時間が終わり、午後の授業も終わり、後はHRを過ごせば帰宅という時間になって、
リリィが小首を傾げてテキストを次々と鞄に詰め込んでいるエドに話かけた。
その声にエドは手に掴んでいたテキストをドサリと落としてしまい、
わたわたと・・・まさに「慌てています私」という様子でその場を取り繕うのに必死だった。
「なっなんでも無いよ!!」
・・・・リリィはそんな言葉に「何でも無い」だなんて思えはしなかったが、
悩んでいるといった様子ではないし、エドが「何か」を隠しているのだと気付いていたので、
「話してくれるまで待とうか」とふぅと息をついて落ちているテキストを手に取った。
「でも気をつけてよ。エドちゃんは怪しい人に狙われているんだから」
「おっおう!!」
今日のカリキュラムが全て終了して、級友とも別れたエドはこっそりと裏門に回りこんだ。
表とは違い木々が茂りひっそりとした雰囲気の裏門からきょろきょろと辺りを見回していると、
コンコンと金属を叩く音がした。
「エディ!こっちだよ」
グレーのスーツを着込んでいるロイが車に寄りかかるようにしてそこに立っていた。
寒さが増してきた日々に合わせて色づいている木々を背景にしてそこにいるのは夫。
いつも見ている青い軍服と違う夫の姿に熱くなる頬を隠すことにエドは必死になった。
「おっ・・・おぅ・・・見つからなかった・・・ろうなっ!!」
「もちろん。君に会う前に追い返されては堪らないからね」
恥かしさのために連れない態度をとるエドにクスリと笑いを溢してロイは答える。
いつもは見つかって戸惑っているエドも可愛らしいので、わざと表門に車をつけていることもあるが、
今日は見つかることは避けなければならなかった。
耳元に掛かる金色の髪を後ろに括って細いリボンで結んでいる。
学生鞄をキュッと握って照れている姿は自分の妻だというのに酷く可愛らしい。
・・・・こんな可愛らしい姿を自分以外に見せていたとしたら、腹立たしいことこの上ない。
やはり、誰かに婚姻関係を気付かせて・・・退学を狙った方がいいのかも知れ・・・ないな。
顎に手を当ててロイはふむと考えていく。
考えれば考える程に制服姿も犯罪的に可愛い。
・・・通学中も大変に危険なのではないか!!!
「ろっロイ?」
思考が突っ走り始めたロイを下から見上げるようにしてエドはロイに問いかけた。
可愛くない態度をとったので呆れられたのではないかと心配に思ったからであったが、
その姿すらロイにはツボ以外の何ものでもなかった。
「まっまぁ・・・今日は特別な日だからね。さぁ、車に乗ってくれますか?奥様」
コホンと咳をして場を切り替えると、ロイは恭しく車のドアを開いた。
エドはふわりと笑い「はい」と答える。
今日は二人の結婚記念日。
2人が共に過ごす事を誓った日。