白い花

白い花嫁衣裳

白い手袋

 

 

肌は透けるような白さ

頬は自然ではない明るさ

 

金色の双眸はかたく閉じられ

震えることもない

 

 

 

 

「全くもって似合っていないと思うよ」

 

 

こんな言葉を言うのは初めて。

いつもとは逆の冷たい言葉。

 

 

ねぇ、怒って。

頼むから。

 

何度だって謝るさ。

涙だって流すと思う。

それは、謝罪ではなく、歓喜の涙。

 

 

動かない恋人。

どうしてこんなにも冷たいのだろうか。

 

太陽のような金色の髪もそのままに。

甘い香りすら漂ってきそうなのに。

 

 

恋人から香るのは清めの香りで、

まわりに置かれた花の香りで。

 

 

これからだったのに。

すべてはこれから。

 

愛の言葉も囁いた。

なぜいつものように照れてくれないのか。

 

 

取り戻したのは弟の体。

なくしたものは?

それで満足?

 

 

「似合ってない・・・そんな」

 

 

そんな綺麗な衣装も

真っ白な花も

 

何もかも似合ってなどいない。

 

君が笑わないのに世界が明るいと思うのかい。

君がいないのにここで生きていけというのかい。

 

なんて酷い。

 

 

 

 

「・・・大佐」

 

泣くことの出来なかった少年が、

目を腫らして言葉をかけた。

 

カタリと音をたてた扉を閉めて、

外からの明かりが一瞬入ったがそれも途絶えた。

 

見ることの出来なかった金色の髪は、

知っている色よりも少し濃い。

目の色は良く似ていて愛しい人を思い出させた。

 

もう二度と見ることの叶わないそれ。

 

 

「すみ「謝らないでくれないか」

 

言葉を重ねてその音を止める。

鎧に反響する事無く響くその声は、

酷く悲しそうで痛そうで。

 

もしかしたら、自分の声もそう聞こえているかも知れないけれど。

 

 

「君が謝れば・・・私は君も許せなくなってしまう」

 

「・・・はい」

 

 

こんな結果を望んだわけでは決してなくて。

誰も。

 

 

そして、一番悲しいのはきっと一人先行く小さな恋人。

 

 

どんなに辛かったのだろう。

それとも嬉しかったのかい。

 

弟の体を取り戻すというその願いを叶えて。

その願いだけを叶えて。

 

たった一人で旅立つなんて。

 

 

まだ旅から旅へと向かうのかい。

ずっと、私を待たせるなんて。

 

・・・いや、君を先に待ってもらう事になるのか。

 

 

サラリと髪を撫でる。

その感触だけは知っているまま。

 

 

 

選んだ花嫁衣裳。

白い花嫁は、白い花に包まれて。

初めての化粧をされて、そっと横になる。

 

白い手袋は機械鎧を隠して、

笑った顔が見たいのに、その瞳はかたく閉じられている。

 

 

なんて似合わないのだろう。

 

 

だから、起きて。

ロイエド子

白い花