「何の話だい?」
前から、横顔の見えるその位置に動き、
言葉の続きを促される。
なんて残酷なのだろうとそう思う。
この郷愁を漂わせたその胸の内に、どれほどの感情があるのかを貴方は知らないというのか。
自分が確かに灯したその焔であるというのに。
今更、知らないというのだろうか。
「だから、等価交換って知ってるかって聞いたの」
「君は、私を誰だと思っているのかね」
「国家錬金術師なのに焔しか操れなくて、大佐なのに中尉にしかられてばっかりで。後・・・」
「もういい。君の私についての認識は十分理解させてもらったよ。」
盛大なため息とともに言われた言葉に、そりゃよかったと
こちらも少々オーバーアクションをつけて、答えてやる。
問題は、そんなことではないときっとお互いに気付いているが、その本質を問いただすことはできない。
お互いのその危うさ故に。
話の後の沈黙は一体どんな意味を持つのだろうか。
それが、前ではなく、横を歩くこの男にとって。
言いたくはないのかも知れない。
いや、言いたくはない。
その言葉で終わりになってしまうかもしれないから。
この状態が確かに危ういもので、
一本の細い線の上だとしても、繋がっていられるならば
どんなにかいいのだろう。
しかし、線が伸びきってしまえば、そこに意味などあるはずもなく。自分は激しい後悔をすることだろう。
どちらがマシなのか検討をつけることすら難しい。
「なぁ、もし、あんたが等価交換を知っているなら教えてくれないか。」
すでに横にいたロイは、悔しいが身長の差がある為に足を止めることは無かったが、
それでもその視線を自分へと動かした。
「君に等価交換について教授する必要があるとは思わないが、
聞きたいならば、答えよう。」
嫌味なほどにあっさりと。
気付いているだろうその言葉の裏を、
何も無いかのような顔をして受け取る。
必要が無いならば、拒否してくれればいいのに。
「想いに等価はあるのか」
このまま傍にいられる事を願いながらも、
そうならないであろう未来の事を考えるエドの心境。