「おかえり、エド。」
エドが、アルの身体を取り戻したと知って、すごく喜んだ。
あの子の決意とか、女としての覚悟とか、いろんなことを知っていたから。
自分の中に全て、全て抱えてしまっていたから、
身体を取り戻したことも嬉しかったけど、もうそんな全てのことから、あの子が自由になれることが、本当に本当に嬉しかった。
でも、
変わりに、感覚を全て失って、それでも笑ったエドが痛くて、痛くて。
抱えてたものの変わりに、背負ったものは、女性としてすごく辛くて。
お見舞いにいっても、何を言ってあげられるのだろう。
「おめでとう」って言いたかったのに。
「ありがとう」って言ってほしかったのに。
「ははっ・・・ごめんな。そんな辛そうな顔すんなよ。」
エドの方が、もっと、もっと辛そうな顔してる・・・。
「いいんだよ。これは、もともと俺が背負うものだったんだから・・・。」
違う!違うよ・・・エド。
だって、そんなこと無いもん。こんな結果のために、あんたたちの旅があったなら、
私は止めてたよ。アルだって、止めてたよ。
だから、しょうがなくなんてない。
「准将がさ・・・いいって言ってくれたんだ。こんな身体なのにな。」
准将っていうのは、エドたちを国家錬金術師に推薦した人で、
エドが彼のことを話すときはすごく幸せそうだったから、
あぁ、好きなんだなって分かってた。
「プロポーズでもされたの?」
エドの顔が真っ赤になっていく。
あぁ、変わってないな・・・。
エドは、変わらずに帰ってきているんだ・・・。
唐突に、でも本当にそう思ってしまった。
「こんな身体になったこと、後悔はしていない。
でも、やっぱり・・・少しは辛くて。
結婚なんて、出来ないって思ったんだ。」
うん。頷くと、エドは赤い顔のままで、続きを言う。
「でも、いいって言ってくれて。・・・自分の子どもも、何もいらないから。
そばで、生きてって言われたんだ。俺なんか・・・。
俺は、いつまで生きられるかなんて、分からない。・・・子どもも絶対に生んでやれない。・・・それでもいいっていうんだぜ。」
困ったように笑う。
困ったように笑う。
自分をそんなに傷つけないで。
貴方をそのまま愛してくれる人はいるんだよ。
「エドは正しく生きたから、ご褒美だよ。」
出会えたことは・・・エドのため。
本当にそう思った。でも、エドは驚いたようにこっちを向く。
どこが正しくなんだ。と、とても不安そうで・・・。
エドは、なんか、じゃない。俺なんかなんて言わないで。
「エドは正しく生きたよ。私は見てきた。
エドがどれだけ、お母さんを大切にしていたか。アルを大切にしていたか。
方法は違っていたかもしれないけど、その思いは本当に、正しい思いだよ。
大丈夫。エドは幸せになれるよ。エドが幸せになれないなんて嘘だ。」
あぁ、泣かないで言おうと思ったのに。
伝わったかな?自分が思っているその半分でも・・・。
エドが幸せになっていいんだよって、伝わったかな?
幸せに、幸せに・・・。彼女が無くしたもの以上に幸せに。
エド子の切ないその後。
死にネタを含みます。