私の息の根を止めるのはきっと貴方。

 

 

 

さあ、この胸に短剣を突き刺して。

深く抉るなら貴方の手は血に染まるけれど、

私は吐息のような一言だけを貴方に残して事切れる。

 

 

さあ、眉間に一発。

黒く光るその形状はまるで貴方の色。

震えていたら上手く貫けないでしょう?

私は一粒の涙だけを残して事切れる。

 

 

さあ、背後から燃やして。

貴方の焔はきっと分かってしまうから、

背後から優しく包むようにその焔で。

私は綺麗なダンスを踊って事切れる。

 

 

 

いつだろう。

いつ貴方は私を捨てる?

 

禁忌を犯し、禁忌で失ったものを禁忌で取り戻そうと望み。

砂塵を掴むように、醜く地べたを這いながら、

女の顔を上手く隠せたでしょうと赤い唇で笑う。

 

どんなに滑稽だったでしょう。

どんなに愚かしかったでしょう。

 

どんなにどんなに。

 

 

 

そんなに優しい腕で

血にまみれた腕で

 

 

そんなに優しい眼で

残骸を見つめた眼で

 

 

そんなに優しい声で

死を宣告した声で

 

 

 

あぁ、出会わなければ、私はこんなにも苦しくなかった。

出会わなければ、とっくに死んでいたけれど。

 

 

 

心が悲鳴をあげました。

たった一言です。

 

ただ。

 

 

貴方に届けたいと鳴いたのです。

 

けれど。

 

届けばきっと貴方は泣いてしまうだろうから。

届く事はないのだけれど。

 

 

一言だけ。

 

声にならないのなら、口に乗せてもいいでしょうか。

紅い血が零れて、

カサカサの唇で、

 

 

「       」と。

 

 

やはり駄目でしょうか。

それすら、許してはもらえないでしょうか。

別れの儀式

ロイエド子