してはならないと言われたことを、指折り数えてみる
何をはじめに言われただろう
「うそを吐いてはだめ」
「弟をいじめてはだめ」
「けんかをしてはだめ」
「・・・命を作ってはだめ」
「金を作るべからず」
「人を作るべからず」
「軍に忠誠を誓うべし」
「振り向いてはいけない」
「泣いてはいけない」
「弱音なんて吐いてはいけない」
「前を歩かなきゃいけない」
あぁ、指が足りない。
いや。
守らなければ成らなかったものを
踏み誤る事が無かったならば、
自分はこんな枷を持たずに済んだのだろうか。
あの初めのあの考えが、
過ちだと気付いた瞬間に、時はすでに流れ流れて。
この腕で止める事などできなかった。
大切にしなければならなかった者たちを、
自分は「無知」という名の武器を持って、
踏みにじりながら進んでいたのだ。
見ないふり
聞かないふり
正しい事をしているのだと、強引に言い聞かせ
ただ進み行く道の先を希望だと信じていたかっただけ。
ごめんなさいと言った言葉を
許して欲しいと言えなかった言葉を
どうして隣に眠るこの黒髪の男の前では
込み上げるようにして突き上げてしまうのか。
彼ならば自分の過ちを糾弾してくれるのだと
そんな期待にも似た気持ちを持って。
今日も彼の家の扉を叩く。
あの暗闇と紅い焔を操る彼ならば。
蹴倒して、髪を掴んで。
前を睨めと頬を殴ればいい。
口の中に血の味を
まだ血が流れていることをどうか知らせて欲しい。
なぁ頼む。
指折り数えた「してはならないこと」を
この体に刻み付けて欲しい。
あんたなら。
あんたなら。
きっとそれが出来る。