パパが怒っている。
パパはお仕事の服のままで、リビングにあるテーブルを叩いた。
パパとママと私の3人で動物園に行った時の写真がカタンと音を立てて揺れた。
「どうしてきちんと保育園で待っていなかったんだい!?
答えなさいリアっ!!
君がいなくなったと先生から連絡をもらってどれだけ心配したか。
どうして先生に嘘なんてついたんだ?どうしてパパが行くまで待ってなかった?!」
だって、私は・・・パパに。
ぎゅっとエプロンを握る。
ママとお揃いの赤いエプロン。
いつもママのお手伝いをする時に着ていたエプロン。
「だって・・・・」
「だってじゃないっ!こんな遅くに一人でいることがどれだけ危険なことか。
こっちに来なさい。先生にもきちんと謝りにいかないと」
私は。
私は、パパに。
パパに美味しいものを食べてもらいたくて。
一緒に「おいしいね」って笑ってご飯を食べたくて。
ママみたいにパパが帰ってくるまでにご飯を作って、
パパは「今日の夕食は?」って聞いて、笑って、一緒に食べて。
それから、いろんな話をして。
「・・・パパが遅いから・・・パパが遅いから!!
ずっと待ってても来ないからだもんっ。だから一人で帰ったんだもん!!
ごめんなさいなんて言わない!!絶対に言わないんだから!!!
パパの・・・パパの馬鹿!!!」
パパの横を走ってリビングを出る。
パパが振り返ろうとした時にまたテーブルが揺れた。
今度は写真立てが音を立ててひっくり返り、
カシャンと響いたから硝子が割れてしまったのかも知れない。
パパとママと私の写真が。