その日、司令部に1つの犯行声明が届いた。
分厚い封筒に入れられた「いかにも」という声明に司令部の誰もが疲弊した。
というのも、現在司令部に届けられている声明は7つ。
時期も所属団体もその計画性の実態も定かではないモノを含めれば、それは莫大な数に及んだ。
「・・・・これは何かの冗談なのだろうか」
「冗談ではありません、准将」
いくらサボリ癖のあるロイ・マスタングであっても、もはやサボれない状態を生み出しつつあった。
「読み上げますか?」
「いや・・・どうせくだらない内容だろう。 鑑識に回して、犯人の特定を急げ」
そうですね、とホークアイもまたため息混じりにその封を閉じ、事情聴取に追われるフュリー以下の部下に回す事に決めた。
文面の最後に記されていた、「我々は次なる報復を用意している。
要求が果たされない場合金色の太陽の安全は保証されない」
との文面に気付く者はいなかった。
「はぁ〜はやく、エディに会いたい・・・」
ロイは今日も今日とてお偉いさん方の嫌がらせ含む犯行声明の真偽を続けていた。
ロイが地位を上げれば上げる程に、やっかみは増え、
いつ取って代わられるかと上官は焦っているらしい。
「だからと言って、こんな馬鹿げたものを送りつけるかね」
「まぁ・・・上官殿はお暇なようですね」
上質の紙は紙飛行機にしてもよく飛ぶ。
取り合えず真偽の分ったモノから処分を始めて、犯人の目星は付きつつある。
しかし、届けられた犯行声明はほとんどが偽者なので(上官の嫌がらせ含め)、
どの団体が引き起こした騒ぎなのか特定が遅れていた。
起きた事件はこれより5日前に遡る。
夕刻のショッピング街を狙った大規模なもので、
小さな子どもにも被害が及んでいた。
次々に届く犯行声明によって混乱は膨れ、
この5日間司令部に缶詰状態である。
ロイが最愛の妻であるエドに会ったのも5日前のこと。
すでにロイはエド欠乏症に陥っていた。
「はぁ・・・会いたい」
「はいはい、会うためにもお仕事頑張りましょうね」
ハボックは滞っている通常業務の書類をドサリと執務室のデスクの上に置いた。
「お前は・・・私を過労死させたいのかね」
「はいはい、最愛の奥さんに会うためですからねぇ」