妻が突然切れてしまった電話を持て余しているのと同じ頃、
夫もまた固まっていた。
ツーツーツー
「!!っホークアイ大尉!!」
愛しい妻の声を5日ぶりに堪能していたというのに、
突然に途切れてしまった電話を握り締めてロイは補佐官の名前を叫ぶ。
「呼ばれましたか?」
そこに調度書類を各部署に運び終えたホークアイが戻ってきた。
「わっ私が久しぶりにえっエディ・・・妻と話しを」
「落ち着いてください」
カチャリと腰の小型銃を抜き取り、
受話器を持ちワナワナと震えている上司に向かいホークアイは短く言い切った。
「なっ!君は」
銃口をロイに向けたまま、ホークアイは続けた。
「少し黙ってください。エドワード君に何かありましたか」
「君が電話を切ったのだろう?」
「まさか、准将殿の仕事の効率を考えれば、お電話を切る方が仕事は滞りますのに」
「では・・・」
ロイにしてみれば、通常業務がテロ処理に終われて片付かない事に業を煮やしたホークアイが、
自宅にかけている電話を切ってしまったものだと思っていた。
コンコン
切れた電話を尚も持ち続けていたら、執務室のドアが叩かれた。
慌てた様子で走りこんで来たのは、珍しくフュリーであった。
「しっ失礼します。
只今、外部通信用の電話線に障害が生じているとの報告を受けました」
「軍用の通信設備は?!」
「そちらは通常通りです」
ホークアイによる妨害ではないと分ってホッとするが、
障害が発生というのも、稀なことである。
「現在、テロとの関係を調査するとともに、復旧作業にあたっております」
「あぁ、それで構わない。続けてくれ。
・・・ホークアイ大尉、ハボック、ブレダ、ファルマンを呼んでくれ」
チンと音を立てて受話器は下ろされ、
夕焼けの茜色が入り込む執務室にロイの影が長く伸びる。
「このままでは何時になったら自宅に帰られるのか分らない。
一気に片付ける。さぁ、忙しくなるぞ」
口の端を上げて言うロイに、ホークアイ、フュリーは揃って敬礼で答えた。